テニスラケットを破壊する選手の話

大坂なおみ選手がイタリア国際でラケットを破壊した件で、非難する人が多くて驚いています。ラケットを破壊する選手は他に大勢いるにもかかわらず、大坂なおみ個人を叩く材料に使っていて、テニスファンとしてすごく嫌な気分になっています。

そういう人は普段テニスを見てないっぽいので、ちょっとラケット破壊をする選手について自分の意見を書いてみたいと思います。

テニスのシングルスプレーヤーはコートに入ったら、自分一人だけで戦わなければならなりません。誰かにアドバイスをもらうことはできませんし、体力のコントロールや戦術判断も自分ですることになります。

一昨年はWTAツアー(女子のテニスツアー)ではコーチのオンコートコーチングが認められていましたが、コロナ禍でできなくなっています。

同じ個人種目でもゴルフはキャディにアドバイスを求めることができますし、卓球は作戦タイムを取ることができます。格闘技の柔道やレスリングは闘技場の脇からコーチが大声で指示を出していますよね。テニスは全くそれができませんし、コーチングを受けたらペナルティになります。誰の助けを受けることもできないテニスは他の競技にはないくらいに孤独な戦いをしているわけです。

人は物事がうまく運ばないことがあると、時には自暴自棄に陥ったりします。その際ものに当たったことがないって人がいたら、「そんな奴おるかい」と言っていいくらいでしょう。

テニス選手の場合、ものと言えばラケットとボールしかありません。ボールを観客席に打ち込んでイライラを表現する人もいます(当然ペナルティになります)し、中にはラケットをコートにたたきつける人もいるわけです。もちろんじっと我慢する選手もいます。そこは個人差があります。

大坂やセレナ、ジョコビッチ、メドベージェフなどはものに当たる人で、ナダルはじっと耐える人と言っていいでしょう。最近のフェデラーも耐える人になってきてます。

実はラケットに当たることがない選手の方が珍しいくらいです。日本人でも女子選手では大坂選手くらいですが、男子選手ですと錦織選手と西岡選手はラケットを破壊することがあります。西岡は今年何回ラケットを壊していることかw

そういう背景を理解しないで、ラケットを壊してる大坂なおみ選手だけを非難してる人はテニスというスポーツをちゃんと理解できてないんだなということがよく分かります。

もちろんラケット破壊はやってはいけないことですし、やったらペナルティになります。そういうルールですし、ルール以前にラケットを作ってる人に対しての冒涜とも呼べるものです。

それでも人間は感情の生き物で、分かっていてもやってしまうことがあります。サッカーでも分かっていてもファウルをしますよね。それと同じです。

自分ひとりで戦うというのは孤独なものです。例えスタンドに仲間や家族がいても、彼らは一言も発することができないばかりか、ジェスチャーで支援することすらできません。せいぜい良いプレーをしたときにガッツポーズを見せるくらいです。

孤独な戦いを繰り広げてる選手を思えば、ラケットを破壊する行為を非難するのではなく、ちゃんとテニスを見てから「あいつ、いらついてるぞw」「お、怒ってる、怒ってるw」というくらいにして、暖かい気持ちで見てほしいものです。