なでしこジャパンアジアで散る

オーストラリア、韓国、中国を相手に2敗1分け。格下とか格上とかはこの際関係ない。結果が全てである。
「意識合わせ不足」という戦術的な問題はあったかも知れないが、はっきり言うと、戦う姿勢に欠けていたと思う。
試合前からヘラヘラと談笑している姿が「国際大会を舐めている」と感じていた。笑うのは試合に勝ってからにすべきだろう。どこかでサッカーを舐めているところがあるように感じられた。心の隙を突かれた結果なのである。
戦術的な話をすると、ドイツ大会までのなでしこは細かくパスをつなぎながら、ポゼッションを高め、相手の攻撃の機会を奪うサッカーをしていた。ところが、ロンドンオリンピック以降「縦に早く攻める」サッカーに転換し始めた。縦に早く攻めるには、前線の動き出しとスピードが要求されるが、それに対応できる前線がいないチームである。今回の中国線を見ていても、日本のFWより相手DFの方が走るスピードが速い。これでは縦に早く攻めるのは無理であろう。
ディフェンダーにも精度の高いパスがだせる人材が必要になるが、これは練習を重ねることによりある程度はできるようになるテクニックだ。
ティキタカの元祖スペインもW杯ブラジル大会で崩壊してしまい、ティキタカの生みの親とも言えるバルセロナも一時期チームが停滞したことがある。その結果今ではサッカーのスタイルを少し変えている。もちろん監督がポゼッションにこだわるグアルディオラから変わったからだが、バルセロナの場合は、前線にメッシ、スアレスネイマールという南米が誇るFWがいるのだ。
スタイルを変えるならそれなりのタレントがいなくてはならないが、なでしこジャパンの場合はW杯ドイツ大会からほとんど変わっていない。澤という絶対的なリーダーが抜けた分、チーム力が落ちてしまっている状況である。
なでしこジャパンはスタイルを変えるべきではなかった。少なくともアジアと戦うときにはティキタカでやるべきだ。高さもスピードも図抜けた選手がいないのだから、足元のテクニックと戦術で勝負するしかない。ポゼッションを高め、相手の攻撃機会を奪うことでDFの負担を減らし、相手を走らせることで後半のチャンスを増やす。フィジカルが強い相手にも通用する戦術であり、日本人に向いている戦術であると確信している。徹底して精度を磨き、相手を翻弄するくらいのサッカーができるようになって欲しい。
同じことが男子にも言える。最近では宇佐美や武藤のような点の取れるFWが出てきた(まだ代表ではそれほどの実績はないが)おかげで、ショートパスだけでなく、サイドや相手DFの裏を使った大きな展開も組み合わせられるようになってきた。それでも1点を取るのに苦労する場面がかなりあるのは、縦へ急ぎすぎるあまり、ミスが増えているためである。
パスの出し手と受け手の両方の意志が合い、受け手が相手DFを振り切るくらいの素早い動きができなければ、縦に早いサッカーはできないのである。できないことはやらない方がいい。
この屈辱をバネに、なでしこの捲土重来を期待したい。できれば、いいタレントがどんどん出てくることを期待している。それには代表戦だけではなく、もっとなでしこリーグを盛り上げる必要もあるだろう。みんなサッカーを見に行こうよ。(自戒の念も込めて)
最後に、なでしこのディフェンスには高さが足りない。福元もあと10cmあれば、止められたシュートもあるだろうし、1対1の局面での相手に対するプレッシャーも大きくなっただろう。そういう意味で山根には大いに期待しているのであるが、いかんせん気持ちの弱さに問題があるように感じられる。GKは味方を叱り飛ばすくらいの気概がないとレギュラーは張れない。技術的にも精神的にも成長が必要となるだろう。
国際大会の試合前にヘラヘラ笑ってる姿はもう見たくはない。1年後、生まれ変わったなでしこジャパンを見られればと願う。