アベノミクスの正体がこれで見える

クルーグマン「さっさと不況を終わらせろ」を読んだ。内容的には不況を脱するには「金融緩和と財政出動をどんどんやるべき」と主張するもので、これまさにアベノミクス
しかし、使える金を増やすために「増税はするな」と言っているが、安倍政権では所得税増税と消費税など増税も実施しようとしているため、この主張とは相容れない部分となっている。不況の脱却の足かせにならなければいいのだが。
内容には納得できるところが多分にあるが、持続的に財政出動をしていって、景気が回復しない場合は、財政破綻という運命も待っているわけで、安倍政権は壮大なバクチをうとうとしているようにも見える。しかも増税という中途半端な対応もしてしまうことから、失敗する可能性は多少なりとも大きいということになる。
流動性の罠(みんなが将来に不安を持っているため、金を使わなくなる状態)の中ではハイパーインフレも起こらないという主張なのだが、確かにそうかもしれない。ということは、国民が持っている預貯金の枠までは政府は借金してもいいのではないかという気にもなってくる。インフレにさえなれば、借金の負担がそれだけ減るのだから、大丈夫という考えなのだが、インフレにならなかったらと考えると怖いものがある。なので、その不安がなくなるまで、金を出し続けろということだ。
ハイパーインフレの恐れがなければ、政府が発行する国債を継続的にFRBが引き受れば、将来へのインフレが期待できるようになる。FRBはいくらでも紙幣の発行ができるし、やればいいということを著者は語っている。
これFRBを日銀に置き換えてみると、まさにアベノミクスということになるわけだ。
逆にユーロ圏にいるギリシャやスペインではこういうことはできない。ユーロ札を発行するところが国債を買い上げてくれることがないからだ。だからデフォルトの恐れは多分にある。単一通貨の国であるアメリカ、日本、イギリスは大丈夫だと著者は言う。
だが、いずれにしても、成長分野に金がドンドンまわるようにならないと、一時的に景気が回復しても持続性がないと言われてもしょうがないとは思うのだが、この本ではそれは考えないで良いと言っている。つまり、景気回復あってこそ、成長分野に金もまわるという考え方である。
まあ、この先どうなっていくのかが不安な人には、安倍政権の経済財政政策がかいま見えるので、一読の価値はあります。
ただ、小泉構造改革はこれとは逆行する話しなのだが、その中心にいた竹中平蔵アベノミクスに組み込まれているのには違和感があるなあ。結局は中途半端になって、景気はますます縮退し、借金だけが増えるってことにならないですよね!